Last Update:2004/03/08
週に1回ゲームクリエイターにお話を聞いて、お友達まで紹介してもらっちゃうスペシャル企画だ!
>>第135回
フラグシップ
竹本 拓穂 さん
今回は多数のシナリオライターを擁するクリエイター集団フラグシップのプロデューサー、竹本拓穂さんをお迎えしてお送りします。開発スタッフの方々をまとめていらっしゃる竹本さんはゲーム制作において、ある“ドラマ”を感じていらっしゃるようです。スーパーカーと関係が深い、その“ドラマ”とは?
(C)2004ワークジャム / 神宮寺三郎制作委員会

なんでも、前回ご登場いただいた宮下さんとは、非友好的な出会いをされたとのことですが?

  竹本氏
 第一印象はお互いに最悪だったと思います(笑)。
 当時クライアントとしてフラグシップの仕事を見ていたのですが、実は宮下さんの原稿にダメ出しをしたうえに生意気にも「書き直せ!」と言ったんです。そうしたら宮下さんも怒っちゃって「何がダメなんだ!? 原稿読んでるお前がダメだろ!」って、大喧嘩になりました。元はと言えば、僕にちゃんと原稿を読もうという意識が低かったのが原因なんですけどね。宮下さんはすごい作家さんなので、周りが「やばいよー」と緊張していたのが今に思えば笑い話です(半ば笑えませんが)。そして今、宮下さんとは『探偵 神宮寺三郎 KIND OF BLUE』でご一緒させていただいています。
 今、作家さんが書く文章をちゃんと読めるように努力していられるのも、その事件があったからです。お互いが嘘をつかずに意見を出し合って、何度も飲んで何度も話して、気がつけば僕と宮下さんは最高に信頼できる間柄になれました。
 一歩間違えれば、未だに最悪の関係になっていても誰も不思議がらない程の出会いだったと思います。それだけに、“年齢や経験に関係なくクリエイター同士、作品について想いをぶつける”という、当たり前の事を前提に一緒に作品に取り組んでくれる宮下さんには、とても感謝しています。
 


なるほど、確かにそれは壮絶な出会いでしたね(笑)。では、宮下さんとお知り合いになられる以前は、どのようなお仕事をされていたのでしょう?


  竹本氏
 働き始めた最初のころは、ジウジアーロのようにマカロニから車までデザインできるようになりたくて設計とデザインの仕事をしていました。ですが思うような仕事ができず、羽田空港の看板の支柱とか、某路線の渋谷駅にある食堂のカウンターといったものを作っていました。結局、デザインに関係ない設計仕事ばかりで嫌になり、挫折したんです。
 その頃社内の別の部署がゲーム開発をしており、ゲーム画面の中、つまり仮想現実で「モノや商品をデザインできるのでは?」と何か大きな勘違いして社内のソフトウェア開発部に転属しました。その内にゲームそのものを作る面白さが強くなって、プランナーとして働くようになりました。
 また、その頃僕は自動車の盗難防止器を仕事とは別に開発していて、当時「ウゴウゴルーガ」という番組などで活動していたジムコックデザインにデザインを任せることになったんです。そこでミーティングに来るジムコックのスタッフがいつも半ズボン(笑)で、「何て自由なスタイルで働けてるんだろう」って、当時は羨まく思いましたね。
 それもあって、ゲーム開発とかソフトウェア制作が自由な現場なんだと大きな勘違いをしていました(笑)。
 


ゲーム以外の分野でもいろいろとご活躍されていらっしゃったのですね。では、自分の制作作業において影響を与えた作品などはありますか?

  竹本氏
 作品ではないかもしれませんが、一番影響を受けたのは「スーパーカー」です。スーパーカーとそれを取り巻く「ドラマ」が僕に大きな影響を与えてくれましたね。ランボルギーニカウンタックやミウラをデザインしたマルティロガンティーニ、ジウジアーロ、コーリン・チャップマン、フェルディナントポルシェ博士、エンツォ・フェラーリなどなど、自動車とスピードに魅せられた人々の生い立ちやドラマはとても興味深いものです。
 スーパーカーという名に相応しい自動車を、最高の技術を持つ最高のスタッフが悩み苦しんだ挙句に作り出したとしても、興味のない人には「世になくても済む無駄な物」なんです。これはゲーム制作にも通じる感覚で、とても共感できます。でも、つくることは決して無駄ではありません。目的のために人が集まって、そこから生まれるドラマは、どんな映画や文学よりも僕に影響を与えてくれました。ちなみに映画「タッカー」で、このエピソードが描かれています。
 


出来上がったモノの意味も重要だけど、開発人全員が一丸となって制作していく過程も重要ということでしょうか。では、今後携わっていきたいと考えていらっしゃることや、興味を持っていることなどはございますか?

  竹本氏
 “目的意識”をちゃんと明確に伝えられるゲームをつくりたいと思っています。ユーザーに限られた時間とお金でゲームを遊んでいただくためには、「何ができるか? 何が楽しいか?」ということをもっと明確にすべきだと認識しています。携帯電話やメールなど、目的がハッキリしているものはユーザーも迷うことなく受け入れますし、ブロードキャストであるテレビにおいてはユーザーは努力しなくてもエンタテイメントを楽しめます。
 それに対しゲームは「何が面白いのか? 何を得られるか?」を明確に伝え、ユーザーに時間を割くだけの理由があることを理解させる必要を感じています。ゲームはデバイスではなくメディアなんだという認識を、ユーザーに持っていただくための努力をしていきたいですね。
 また個人的に「遊んでみたい」と思っているゲームは、ホログラムを使ったモノです。これは自分で作りたいですし、遊んでみたいですね。ホログラム分光器も安価で現実的になってきているので、ペリフェラルとして何かに使ったゲームを作ってみたいです。もしくはナビゲーションを使って実際に移動するゲームや五感に触れる作品ですね。
 他に興味があるのは仕事です(苦笑)。いや、語弊があるかも知れませんが、仕事その物が趣味なので(笑)。自分が感じたことや見たもの、その他色々な趣味や興味を「ゲームというメディアでどう表現できるか?」その可能性を考えている時間が最も辛く楽しい時間です。職業病かも知れませが、まったく別のことでも「ゲームにしたら…」って考えて、僕は自然に楽しめちゃうんですよ(笑)。
 


最後に、今後ゲーム業界を目指している読者へ向けて、ゲーム制作において一番大切だと思うこと、作品を世に送り出すにあたって心がけていることをお聞かせ下さい。

  竹本氏
 何にでも興味を持っていただきたいですね。自分の興味のあることだけでなく、何にでも興味を持てることは大切だと思います。そして何よりも人に興味を持って、人と接する面白さを大切にしていただきたい。今日の僕があるのも、宮下氏のおかげであり多くの人のおかげで、名前を挙げたらキリがない程多くの人のおかげです。人と人が出会い、互いに興味を持つことで初めて作品に繋がると強く信じています。
 自身の興味を人と分かち合い、他人の興味を自身の興味と感じられることは大切だと思います。どんな優秀なクリエイターも一人では何もできません。そこに人がいて互いに結びつき、それが作品の誕生に繋がると強く信じています。
 ゲームと関係のない、恋でも夢でもアイドルでも何の話でも良いので人と話す面白さ、人と出会う面白さ、人と一緒に成し遂げる面白さ、そして友人であり仲間を大切にしてください。最近のゲーム業界はコンピュータとハイテクで難しいことをしている業界ですが、所詮人間のやっていることです。人間関係こそが最高の技術と思っています。
 


開発スタッフ全員で生み出す中には“ドラマ”があると認識されている竹本さん。人とのつながりを大事にされている竹本さんだからこそ、作品だけでなくその制作過程にも強い思いを込めておられるのでしょう。続けてお話をお聞きしたいところですが、今回はここまでです。それでは、次回のお友達をご紹介していただきましょう。

  竹本氏
ヒットメーカーの土屋淳一さんをご紹介します。土屋さんは僕がメシを食えない頃、窮地から救ってくれた師匠のような人です。来週あたりに僕の新車を見せびらかすために遊びに行きますね!(笑)
 

土屋さんはアーケードで稼動中のカードサッカーゲーム『WCCF』のプロデューサーをなさっている方ですね。コンシューマとは一味違うアーケードゲームならではのお話が伺えそうです。では、竹本さん、ありがとうございました。