【CEDEC 2008】『ヴェスペリア』講演「PS2ならシリーズが終わっていた」

 
イベントレポート  

【CEDEC 2008】『ヴェスペリア』講演「PS2ならシリーズが終わっていた」

2008.09.10
『テイルズ オブ ヴェスペリア』関連情報

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 『テイルズ オブ』シリーズ初の“次世代機”用タイトルとして各方面の注目を集め、発売されるや否や、たちまちXbox 360用タイトルの初動記録を塗り替えるという好調なスタートをきったバンダイナムコゲームスの『テイルズ オブ ヴェスペリア(TOV)』。

 「CEDEC 2008」開催2日目には、同タイトルのプロデューサーである郷田努氏、制作プロデューサーを務めた樋口義人氏、そしてローカライズを担当した三好秀一郎氏の3人による、「Xbox 360『テイルズ オブ ヴェスペリア』から見たハイデフRPG開発」と題したセッションが行われ、人気を集めていた。




左から、プロデューサー 郷田努氏、制作プロデューサー 樋口義人氏、ローカライズを担当する三好秀一郎氏

 そもそも『TOV』の企画がスタートしたのは、同スタッフによる前作『テイルズ オブ ジ アビス(TOA)』の開発終盤から。樋口氏によれば、このときにはまだ次世代機で発売するとは決まっておらず、『アビス』の成功を受け、当然次もPS2に向けて発売するものと思っていたらしい。しかしこのとき「それではシリーズが終わってしまう」と上司から言われ、その一言で、シリーズの“次の方向性”を示す作品として、次世代機での『テイルズ オブ』開発がスタートしたのだという。もちろんその後も、ハードの選定や、ハイデフになったことによる作業量の増加など問題はあったが、これらを乗り越えてようやく現在の『TOV』の原型ができあがったというわけだ。

 また当然、HDでの制作となるとSD時代よりも作業量は圧倒的に増えることになる。しかし、だからといって過去のシリーズよりも、ボリューム・クオリティの面で不足があっては意味がない。郷田氏は今回、HD制作にあたっての考え方として、シナリオのボリューム、アニメーションの収録時間、バトルシステムの奥深さ、そしてグラフィックのクオリティ、そのすべてにおいて「シリーズ最高」を目指した。同時に、シリーズの新たな出発点として、良い部分は当然残しつつも、変えるべきところは思いきって変えていく。「“今まで通り”というのは禁句にしました」と、郷田氏は語っている。


 となると気になるのが関わったスタッフの人数だが、郷田氏によると、トータルでは「SD時代とそう人数は変わっていない」とのこと。これはもちろん、新たなツールやソフトの導入による効率化などの恩恵もあったが、最大の“効率化”は何と言っても、「現場のコアメンバーが前作とほとんど同じだったこと」なのだという。なんともシンプルな答えだが、やはり気心の知れたメンバーの方が理解も早いし、土壇場での踏ん張りも効くのは当たり前。別の見方をすれば、これまで『テイルズ オブ』シリーズを作り続けてきた歴史とノウハウがあればこそ、HD時代になっても変わらぬクオリティを維持できたのだとも言えるだろう。

 また今回、もうひとつ新しい試みとして取り組んだのが、ワールドワイドでの発売を見据えた「並行ローカライズ」という部分だった。Xbox 360で発売するとなると、当然海外市場でのヒットなくして成功はあり得ない。そこで従来ならば、日本での発売後、後追いでローカライズ作業にかかっていたところを、開発のかなり早い段階から“並行”して進めていったのだそう。このおかげで、今回はキャラクタデザインやタイトル名の選定など、様々な部分であらかじめ「海外」を意識しながら作ることができたのだという。

 三好氏によれば、今回、ローカライズにあたって特に注意したのが「エッセンスの共有化」。つまり、ローカライズしたことによって同じシーンでも日本と他市場とで、違った印象を受けるようなことがないように、どちらのバージョンでも同じようにゲームが楽しめることを心がけたとのこと。一見当たり前のように思えるが、セリフまわしなどは当然として、互いの文化の違いなども考慮しなければならないため、これは実際にはかなり難しい作業となる。
 たとえば三好氏が例として挙げたのが、あるイベントでキャラクタが「切腹」しようとするシーン。さすがに海外のユーザーも「ハラキリ」くらいは知っているのだが、難しかったのはその際に尽き添う「介錯人」の説明。最終的にどうしたかというと、介錯を引き受けたユーリのセリフを、「オレがやろう」から「やらせてもらえるなら光栄だ」といったニュアンスに変えることで、仲間の死を看取る栄誉ある役割――といった意味が自然にくみ取れるよう工夫したのだそうだ。

 他にも郷田氏は、営業やプロモーションも含めた、あらゆる関係セクション内で情報を共有するため頻繁に「全員出席」の会議を設けたことや、主題歌のシングルやサントラといった関連商品の発売タイミングについてなど、様々な工夫や新たな試みを紹介。これらひとつひとつが実を結んだ結果が、『TOV』の成功を招いたのだと語った。現在、『TOV』の累計販売本数は、『ブルードラゴン』に次いで全Xbox 360用タイトル中堂々の第2位。郷田氏は最後に、「いずれは『ブルードラゴン』を越えられるように、今後もがんばっていきます」とし、発表を締めくくった。

 と、発表はここまでで終わりだったのだが、質疑応答で面白い質問が寄せられたので、そのやりとりも載せておこう。

 その質問とは、Web上の掲示板などでも“レベルがお金で買える”と話題になった、「ダウンロードコンテンツ(DLC)」への反応について。樋口氏は「たぶん聞かれると思いました(笑)」と苦笑いしつつも、こうした賛否両極端な反応については「最初から想定していました」と告白。「ただ、作り手としてはやはりあらゆるユーザーに最後まで遊んで欲しい」わけで、そしてDLCは「そのために作り手ができる手伝い」であり、同時に「攻略本と同じような、新しいビジネスの糸口になりうるもの」と、その導入理由について説明した。実際、単純に売上だけを見れば、具体的な数字については当然伏せられたものの「決して無視できない数字」であるとのことだった。

 またネット上で起こっている議論について郷田氏は「腹を立てているのは“外野”が多い印象。実際は買わなくても苦労しないバランスにしているし、遊んでくれた人からの意見はおおむね好意的」と、双方の温度差について困惑している様子。結局、最終的な評価について樋口氏は「今すぐに下されるようなものではなく、もっと後になってからわかってくるもの」とし、今はユーザーの意見に耳を傾け、静観している段階とのことだった。

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■関連リンク
「CESA DEVELOPERS CONFERENCE 2008」公式サイト
『テイルズ オブ ヴェスペリア』公式サイト

(C)藤島康介 (C)2008 NBGI
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