【CEDEC 2008】CAPCOM稲船氏「作り手の甘え、経営の不理解が日本の欠点」

 
イベントレポート  

【CEDEC 2008】CAPCOM稲船氏「作り手の甘え、経営の不理解が日本の欠点」

2008.09.10

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 「CEDEC 2008」2日目のセッションは、これまで『ロックマン』シリーズをはじめ、『鬼武者』や『デビル メイ クライ』など、数多くの人気シリーズを生み出してきた、カプコン・稲船敬二氏による基調講演で幕を開けた。

 稲船氏は「ゲームというビジネス、ビジネスというゲーム」と題し、これまでの体験を振り返りながら“ビジネス”と“クリエイティブ”という、一見相反する二つの要素を両立させることの重要性について講演を行った。ここ数年のカプコンを見るかぎり、チャレンジャブルなメーカーという印象も強いが、稲船氏によれば、実はその裏側ではビジネスについて他のメーカー以上に考えており、それが新しいことを始める原動力になっているのだと言う。

 とは言え、やはりクリエイティブとビジネスとは基本的に矛盾の関係にある。しかし、稲船氏はその「矛盾」こそがヒットのキーワードなのだと説明する。

 「相反する二つをもし両立できれば、それは必ずヒットします。安くておいしいものを作れば必ず売れるし、優しくて頼りがいのある男性は必ずモテる。そういう、矛盾が持つヒット性こそが、ビジネスの上でも、またクリエイティブということを考えていく上でも重要」(稲船氏)

 それでは実際にどうすればいいのか。稲船氏は4年前、カプコンを「どん底」から立て直した時のことを振り返り、次のように語った。

 「経営サイドは当時、とにかくリスクを回避してくれと言いました。僕はそれを聞いて、ハイわかりましたと言っておいてから、実際は逆のことをやった(笑)」(稲船氏)

 もちろんこれは稲船氏だからできたことかもしれない。しかし「どうせやらせてくれないだろう」といって最初から逃げてしまうのは、クリエイターの甘えなのだという。「ダメだと思ってしまうのは、自分やゲームに自信がないから。ゲームに自信があるのなら戦うべき」であり、そして「本当に苦しい時こそ、新しいことにチャレンジ」する姿勢が何より重要なのだと、稲船氏はきっぱりと断言している。そして、そのためにはクリエイターと経営サイドが互いに歩み寄り、互いを理解することが必要になってくるというわけだ。


 「ビジネスから逃げていては、クリエイティブなヒットを生むことはできません」と稲船氏は語る。そして逆もまたしかり、どんなに優れたビジネスセンスを持った人でも、それだけではヒットを生むことはできない。結局のところ、クリエイターの甘えと、経営サイドの不理解に、今の日本のメーカーの欠点が集約されているのだと言えるだろう。

 とは言えやはりクリエイティブなセンスと、ビジネスセンスを両立するのは難しい。そこで稲船氏はビジネスのセンスを磨くための方法のひとつとして、株価を常にチェックすることを挙げている。

 「僕はとにかくよく株価をチェックするんです。別にそんなにカプコンの株を持ってるわけじゃないし、買おうと思っているわけでもない。ただ、見ることで経営者の気持ちが少しずつわかってくるし、自分の会社が世間でどう評価されているのか、他のメーカーとの差がどれくらいかというのが、はっきり株価には表れるんです。でも任天堂は除外してくださいね。あそこは比べるだけムダですから(笑)」(稲船氏)

 基本的にクリエイターは、常にユーザーのことを考えてゲームを作るもの。それならば経営者のこともきっと考えられるはず、というのが稲船氏の考えだ。どうすればコストを削減できるか、どうすればスケジュール通りの作品を仕上げることができるか――。そうやって数字と理論でビジネスを考えることが、結果的にクリエイティブなものづくりにつながっていくのだとしている。

 また稲船氏は現在の日本市場をサッカーにたとえて、「今の日本は、たとえばブラジル相手に3点取られてしまった状態」だと表現している。そして「ここから守りを固めろと指示する監督はいません」と、逆境においてこそ、攻め続けることの重要性をふたたび強調。そして自身もまた、今まさにそうした“戦い”を続けている最中であるとし、「いかにクリエイターと経営陣とが交わっていけるかが、今後攻め続けていくためのカギになるでしょう」と、約50分間の講演を締めくくったのだった。

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■関連リンク
「CESA DEVELOPERS CONFERENCE 2008」公式サイト
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