深い感情を喚起するには「フォトリアリスティック」な表現技術が必要!?

 
欧米ゲーム事情  

深い感情を喚起するには「フォトリアリスティック」な表現技術が必要!?

2012.08.08
該当記事(英語)※Rock, Paper, Shotgunより

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 実物とみまがうばかりにまで表現技術を高めれば、ゲーム映画と同じように強い感情を喚起できるはず――こうした声は昔から絶えることがないが、本当に正しいのだろうか?

 『BioShock』シリーズなどで知られる2K Gamesのクリストフ・ハートマン社長は、“GameIndustry International”のインタビューで、次のように発言した。

 「映画「ミッション・インポッシブル」の体験をゲームで再現するのは簡単です。でも、「ブロークバック・マウンテン」が生み出す感情を再現するのは難しい。(中略)映画の駆動力となる、悲しみや愛といった強い感情を生み出すのはとても困難です。ゲームがフォトリアリスティックにならないうちは、新しいジャンルを切り開くのは大変でしょう。今のところはアクションやシューターに力を注ぐしかありません。そうしたゲームが据え置き型ゲーム機には向いているのです」

 さらにハートマン社長は、「フォトリアリスティックな段階にまで到達したときに、ゲームはようやく劇的に変化し、ありとあらゆる感情を盛り込めるようになる。それが終点であり、最後のゲーム機になるのかもしれません」と続けて、フォトリアリズムの重要性を重ねて強調している。

 しかし、ブログメディア“Rock, Paper, Shotgun”のジム・ロシニョール記者は、この考え方にはっきり「ノー」を突きつけた。

 グラフィックはゲームにおいてたしかに大事な要素だ。『ウルフェンシュタイン』シリーズは、一人称視点のナチス殺戮ゲームでなかったら『ウルフェンシュタイン』にならない。ビジュアルと音声、システムの組み合わせがゲーム体験を形作るのであり、ひとつだけを切り離して考えることはできない、と、記者はまず前置きする。

 しかし、「ゲームがフォトリアリスティックにならないうちは、新しいジャンルを切り開くのは大変」という考えはどうか。ゲームキャラが実物の人間とそっくりなら、感情を喚起しやすくなるのか? そうではないはずだ。

 例えば、フォトリアリスティックではないのに泣けるアニメ映画はいくらでも思いつくし、文学作品はそもそもグラフィックをともなわない。実物そっくりであることと、感情的なインパクトを与えることは本来無関係なのだ。『ハーフライフ2』でアートディレクターを務めたヴィクトル・アントノフ氏は、ゲームを現実に近づけるのとは反対に、いかにしてディテールを減らし、様式化・抽象化することで、意味や感情の重みをもたせるかに知恵をしぼっているという。冒頭のハートマン社長の発言は、HD仕様のハリウッド映画にしか触れたことのないような視野の狭さを示していると、ロシニョール記者は強く批判している。

 技術の進歩は新ジャンルを切り開くわけでも、幅広い感情を喚起してくれるわけでもない。それを可能にしてくれるのはゲームデザインのみだ。ストーリーを受動的に楽しむ芸術様式はこれまで何世紀にもわたって磨き上げられてきたが、複雑かつ双方向的なゲームはまだ歴史が浅く、誰もまだ本当の意味ではマスターしていない。新しいものを生み出すのはいつだって困難だが、にもかかわらず、私たちの手元にある手段でそれは十分可能なのだ――と、コラムをまとめるロシニョール記者。

 ロシニョール記者の反論は、『ドラクエ』シリーズで涙腺のゆるんだ経験をもつ日本人ゲーマーには、より合点がいく話かもしれない。「技術が進歩しないうちはアクションやシューターを作るしかない」とあきらめるのではなく、今からでも、情緒に富んだゲームを作る挑戦を開発者にはしてほしいものだ。

(中島理彦)


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