【CEDEC 2009】恐るべき開発技術が、Wii/DSで『FFCC EoT』を動かした

 
イベントレポート  

【CEDEC 2009】恐るべき開発技術が、Wii/DSで『FFCC EoT』を動かした

2009.09.01

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スクウェア・エニックス 開発部の紙山満氏(右)と、任天堂 業務技術部 技術渉外グループ・サブマネージャーの光吉勝氏
スクウェア・エニックス 開発部の紙山満氏(右)と、任天堂 業務技術部 技術渉外グループ・サブマネージャーの光吉勝氏
 今年1月に発売された、スクウェア・エニックスの『ファイナルファンタジ-・クリスタルクロニクル エコーズ・オブ・タイム(以下、FFCC EoT)』。

 「Wiiでも、DSでも」をキーワードに、史上初のWii/DS間のクロスプラットフォーム展開を実現した本作だが、実際に発売にこぎ着けるまでには、驚くような発想の転換と、開発陣&任天堂・業務技術部による並々ならぬ苦労があったという。

 CEDEC1日目に行われた「WiiでDSが動くまで ~面白いコト・新しいコトに対するプラットフォーマーとソフトメーカーとの取り組み事例」では、そんな本作にまつわる驚くべき誕生秘話が語られた。

◆はじめはDSオンリー

 最初に要点から言ってしまうと、実は本作、当初はDSのみの発売となる予定で、Wii版はまったく発売予定がなかったという。ではWii版はどのようにして作られたかというと、「DS版のソースコードをもとに、自動的にWii版が生成される仕組みを作った」(紙山氏)のだそう。すなわちこの仕組みがあれば、あらゆるDS用ソフトを労せずしてWiiに移植することが可能となるわけだ。実際、Wii版『FFCC EoT』は、DS版とまったく同じデータに基づいて作られているという。

 しかし当然、WiiとDSでは前提となる開発環境がまったく異なるわけで、DS用に開発したソースをそのままWiiで動かそうとしても、当然そのままでは動くはずがない。それでは、一体どうやってそんな魔法のような仕組みを作ったのか?


そもそもコンセプトやプレイスタイルがまったく違うハード同士でマルチプレイができたら面白いのでは――というのがWii版開発の動機だった とりあえず試作品を作って見せたところ、企画自体はすんなり承認がおりた。しかしここからが長かった……


◆WiiとDSで同じ開発環境。それならば…!

 そこで紙山氏が目を付けたのが、WiiもDSも同じ、CodeWarriorという統合開発環境を使用している点だった。まずはDSのソースコードを元に、Wii用データとしてビルドしてみる。当然エラーが出まくるが、エラーが出た部分は一旦、空の関数を実装するなどして回避し、とりあえずエラーが0になるまでひたすらこれを繰り返す。気が遠くなるような作業だが、実質5日間ほどでなんとかエラー0にまで持っていくことができた。

 続いて今度は、さきほど空実装しておいた関数の中身を、WiiのSDK(Software Depelopement Kit)を使ってひたすら置き換えていく。またWiiとDSではデータの配置方法(エンディアン)が異なっていたが、これもデータを読み込む際に自動で変換する仕組みを作ることで回避。こうしてついに、かろうじて正常に動くバージョンが完成したという。色々とややこしい説明もあったが、要するに手作業でエラーを地道に潰していったというわけだ。

 ちなみにグラフィックについては、基本的にDSと同じモデル&テクスチャデータを使用。ただしWii版ではDSのおよそ4倍の解像度でレンダリングしており、またテクスチャデータについてもバイリニアフィルタで拡大しているため、DS版よりもさらにくっきりとしたものに仕上がっているという。同じデータを使用していても、出力方法によってさらにキレイになるというのは面白い。


基本とにかく、ひたすらビルドしてはエラーをひとつひとつ潰していくという、地道な作業の積み重ね 同じソースでも、Wii版ではレンダリング解像度のアップにより、DS版よりもさらにくっきりしたグラフィックになっている


◆前例のない「質問」が『FFCC EoT』を完成に導いた

 しかし、ここまででおおよその実装には成功したものの、ここから先のさらに細かな調整や実装を行うためには、外部には公開されていない、WiiやDSの詳しい内部情報が不可欠。そこでようやく登場するのが、任天堂の業務技術部というわけだ。

 技術業務部というのは、任天堂がソフトメーカーの技術的な相談に対応するためのいわば窓口にあたる部署で、メーカーは開発過程でわからないこと、疑問点などがあればここに問い合わせることでサポートを受けることができるというもの。しかし、本来はちょっとした質問や問題解決などに使用されるもので、光吉氏によれば、ここまで大規模な「質問」はいままでに例がなかったという。

 ここからはさらに専門的な内容になってくるため大幅に省略するが、今回の件でやりとりされたメールの件数は、なんと1,082件にものぼったというから、サポートとは言えよく任天堂側も最後まで付き合ったものだと思う。

 しかし、こうして完成した汎用ライブラリだが、実は今のところ使われているのは『FFCC EoT』1タイトルのみ。紙山氏によれば、『FFCC EoT』の場合はたまたまゲームデザインとマッチしていたが、どんなゲームでも有効かと言われれば決してそうではないという。

 ひとつは、リモコンではタッチペンのような細かい操作が難しく、DSのインターフェースがそのままWiiで通用するとは限らないという点(『FFCC EoT』の場合、もともとボタン類を大きめに作ってあったため、リモコンでも操作しやすかった)。またそもそも、DSとWiiで一緒に遊べないゲームをWiiにそのまま移植してもあまり意味はないし、Wiiはゲーム画面、DSは情報端末といった使い方をする場合は、イチから作ってしまった方が手っ取り早いのだという。

 紙山氏は最後に「簡単にポーティング(移植)できるのと、それが有効であるかどうかは別」とまとめて講演をしめくくったが、じゃあ一体なぜそんなシステムを…? というのは野暮というものか。


最後は任天堂 業務技術部の力を拝借。「発想はすばらしい。でも普通はこんなことまずやらない」と光吉氏 まだ本作でしか使われたことがないという、貴重なWii / DSロゴ。はたして再び使われることはあるのか……


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